Bitter Sweet
2人で飲み始めて、世間話に花を咲かせてしばらく経った頃。

ふと沈黙が流れた時に、昂くんはフワッとした微笑みを浮かべて私を見つめた。

その眼差しが柔らかくて、温かくて。
自然と私まで笑みが零れて彼と目を合わせた。

「…俺、実はさ。転職決めた時に彼女と揉めてね。」

突然の"彼女"の話題に内心ビクッとしながら、そうなの?、と話を合わせた。

目を伏せて、グラスに手を添えながら昂くんは続ける。

「まぁ、付き合いも二年経つし、結婚もね、考えてたんだろうな。だから、不安がってた。それは薄々俺も感じてた。」

「…彼女、いくつなの?」

「29。俺と同い年。」

20代最後。結婚を考えてないわけがない。

「昂くんは、考えてなかったの?結婚。」

「考えてなかったわけじゃないけど、まだタイミングじゃないと思ってた。転職でゴタゴタしてるのに結婚なんて俺は出来ない。
あいつの不安を解消させてやることが、俺にはどうしても無理だった。」

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