Bitter Sweet
キッパリと断言する姿に、
"彼女"の淋しさを感じてしまう。

「…彼女、約束が欲しかったんじゃないの?」

「約束って…結婚のだろ?」

「うん、まぁ。ただ、今すぐじゃないけど、いつかはする意思があるんだよっていう…。そんな気持ちの確認をしたかったんじゃないかなーって。」

「…それは、そうかもな。でも、そう言ってやれるほどの気持ちが、俺には足りなかったんだよ。
…だから。」

フッと言葉が途切れ、
昂くんの視線が窓の外の夜景に向く。
つられてそちらを見ると、窓ガラス越しに私を見つめる昂くんの姿があった。

その眼差しは何か決意を秘めたような強いもので、私はガラス越しの昂くんから目をそらせなくなった。

そして、昂くんの口が再び開く。

「ーだから、別れた。そんな中途半端な気持ちで、これ以上続けてもあいつをますます傷つけるだけだって気付いたから。」

………。

何を言えばいいのか、わからない。

きっとそれは苦しい決断だったように感じた。
愛情がなくなったわけじゃないんだろうから…。

そっと、窓から昂くんの方に視線を移すと。

彼は困ったように、眉を下げて私を見ていた。


< 92 / 263 >

この作品をシェア

pagetop