Bitter Sweet
スッと私の頭に高梨の顔が近づき、手を添えられる。


「…髪。煙草のニオイついてる。」

ドキッとして、高梨の顔を見上げた。
目も闇に慣れたのか、うっすらとだけど表情が見える。

…怒ったような、苦しそうな、顔をしていた。


高梨はそれ以上、何も言わないまま。

「…んっ…!」

荒々しく、私に唇を押しつけてきた。

抵抗する私の唇を無理矢理こじ開けて、舌を絡ませてくる。


息が出来ないくらいの激しい口づけに、呼吸も乱れ。


次第に高梨の唇が、首筋へと降りて行き、肌を舌でなぞられる。

「…っ、!」

ピクンと身体が跳ねた。

けれどそこでピタッと高梨の行為が止まり、口を開いた。

「…ウソ、つかないで。有田さんといた?」


掠れるような声で尋ねてくる。

私は何も言えなくて…、

俯いていた。


沈黙が流れる。

「…否定、しないね。」

………。

否定したところで。
高梨はきっと勘付いてる。

「いーんじゃないの?オレに隠さなくても。…彼氏じゃないし。」


自嘲するかのような言い草に、私の胸まで痛くなって、高梨を見つめた。


高梨は私を見下ろして、
呟く。

「…めちゃくちゃにしたい。ひかりさんを。」

そう聴こえたのと同時に、身体がフワッと持ち上がった。






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