らいおん


ちょうどそのとき選手がベンチ入りするアナウンスが聞こえた。

視線を後方の美咲からグラウンドへと向ける。




こんなに離れているのに、一瞬でアイツを見つけてしまう。

キャプテンらしく力強いその姿を見て、なんとなく安心した。




そしてもう1度振り返って美咲を見ると、美咲は俯いていた。

下唇を噛み締めた美咲は今にも泣き出しそうな顔をしていた。




驚いて美咲に声をかけようとすると、それより先に、美咲の頭に帽子が被せられた。

小顔の美咲にはぶかぶかの、清新の野球帽。

あっと言う間に美咲は帽子の持ち主の腕に包まれた。



その時初めて私は気付いた。

グラウンドにもベンチにも、ブルペンにも、瀬川さんの姿がないことに。


いつの間にか、2人の姿も消えていた。



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