らいおん


重々しい空気のまま、スタンドから少しずつ人が出て行く。




外が少し騒がしかった。

「下手くそっ」

信じられない光景だった。

OBだと思われるおじさんが、清新の野球部員に野次を飛ばしていた。

地区の大会でも、そんなことあるんだ。



おじさんは1人の選手に目を付けた。

ピッチャーだった人。

「なんで瀬川じゃなくてお前が投げるんだよ。

 お前のせいで負けたんだ!」

……そんな、ひどいよ。



「すみません…」

その人は拳を握り締めて、絞り出すようにそう言った。



「あ゙ん?聞こえねーんだよっ」

本当に何なのこの人。

こんなこと、許されるの?



いつの間にか、ギャラリーが増えていた。


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