らいおん
「茜、見覚えない?」
美咲がイタズラっぽく笑う。
「え?」
私は正面にある顔をまじまじと見つめる。
短髪で、はっきりした目鼻立ち。
確かに、初めて見る顔ではない気がする。
「清新の、瀬川さん……?」
美咲はニコニコしていた。
清新の瀬川雄介って言ったら、1年のときからエースナンバーを背負ってる、ピッチャーの。
甲子園に出場経験もある彼のことを、地元で知らない人なんてほとんどいない。
プロの誘いもかかってるくらいだ。
「天才野球児の瀬川さんみたいな人が、どうして美咲と?」
瀬川さんが一瞬顔をしかめた。
美咲にも焦りの表情が浮かんだ。