らいおん
「亮のこと、呼ぶか?」
瀬川さんが時計を見る。
「………怖いんです」
「何が」
「今までだって、会おうと思えば会える
距離にいたのに、会いに行かなかった。
亮が迎えに来てくれるって、
心のどこかで信じてた。
でも、本当に忘れられてたら…。
そう思うと、行けなかった……」
瀬川さんは、腕を組んだまま私を見つめる。
その視線が余りにまっすぐすぎて、私は思わず目を逸らしてしまう。
「ごめんなさい、お手洗いに行ってきます」
なんとなく息苦しさを感じて、席を立つ。
そのときスマホを落としてしまい、慌てて拾う。
「それ───────」
「え?」
「………いや」
瀬川さんが何か言いかけたけど、そのまま黙ってしまった。