らいおん
お手洗いから戻ると、瀬川さんはさっきと同じように黙って座っていた。
「亮に、会いたいのか、会いたくないのか。
はっきりしろ」
いきなりそう言った瀬川さん。
口調は乱暴だったけど、表情は穏やかだった。
まるで全部悟ったかのように。
ふと頭に浮かんだのは、孝太郎だった。
泣きたいのは孝太郎なのに、笑顔で私の背中を押してくれた。
「……………たい。会いたいです」
静かに、はっきりとそう告げた。
瀬川さんは満足そうに頷くと、テーブルに置いてあったペンと、アンケート用紙を手に取る。
そこにサラサラっと走り書きをすると、席を立った。
「9日、試合あるんだ。もしかしたら、俺たち3年にとっては最後になるかもしれない」
紙を私に差し出して、お店を出て行った。
紙には試合の場所と開始時間が記されていた。