プラトニック・プラネット
「...か......」
目の前の小さい口から漏れた声は、言葉にならずに引っ込んでしまった。
名前を、呼んでくれようとしたのかな。
なんて、自分勝手に解釈をして、また勝手に好きになっていく。
ああ、もう。
「...可愛い、ね」
ついこぼしてしまった本音に、彼女は目を見開いて、俺の顔をまじまじと見つめる。
普段、他人をあまり映さない瞳が、今は俺だけを映していることが嬉しくて、このまま顔を近づけてしまおうかどうしようかと本気で悩んだ。
すると、彼女は俺の考えを読んだみたいに、耳まで真っ赤に染める。
「真っ赤...」
「う......いや、その、すみません」
...なんで謝るんだろう。
そんなの、可愛いだけなのに。
「俺のこと、好き?」
無意識に声に出してからハッとして、でも和泉さんはすでに聞いてしまった後で。
「へっ?」
後悔しても、遅かった。
......あー。
これはもう、突っ走るしかないかな。
俺はびっくりして固まる彼女の頬を、今度は手のひらで優しく包みこむ。
その柔らかい感触に、うっかり気持ちが溢れ出しそうになったが、なんとか堪えた。
「好き?」
「あ...の......」
「ん?」
さらに顔を近づけると、和泉さんの瞳にじわじわと透明な膜が張る。
......あ、まずい。
そう気付いたときには、すでに彼女の瞼は固く閉じられていた。