プラトニック・プラネット
席替えで、後ろから二番目の席になった。
「こんなに近いの、初めてだね」
しかも、あろうことか風間くんの後ろ。
風間くんが黒板を見れば、私の目の前には、色素の薄い髪と、白くて広い背中がある。
「...なんか、変な感じだね」
「そうだね」
入学してからというもの、風間くんとは同じクラスのくせに、今の今まで近い席になったことがなかった。
たいてい、風間くんが後ろの真ん中あたりで、私は廊下側か窓際の前の方...というのが多くて。
確率論を張り倒すようなクジ運の悪さに、担任教師が嫌がらせしてるんじゃないかと疑うくらいだったのに。
不意に風間くんは横座りして、組んだ両腕を私の机の上に乗せた。
彼はちょっと視線を下げたまま、照れくさそうにはにかむ。
「...俺、ちょっと緊張する、かも」
「え、なんで?なにに?」
「いや...だってさ、ずっと和泉さんに
見られちゃうわけじゃん。
視界に入っちゃうっていうか」
そう言いながら彼は頭をずるずる下げて、両腕の上に顎をちょこんと乗せた。
綺麗なつむじと通った鼻筋が強調されていて、このまま手を伸ばして、思い切り頭を撫でたくてたまらなくなる。
......けど、伸ばそうとした手は無意味に自分の髪を耳にかきあげて、照れ隠しの冗談が口をついて出てしまう。
「...風間くん、乙女みたいだね」
「違うよ。"恋する"乙女だからね」
「風間くん、ツッコむところ違うよ」
風間くんはやっぱりちょっと天然で、そんな私の考えに、気づいてないんだろうけれど。