プラトニック・プラネット
白い背中にギンギンと視線を送っていると、彼は不意にくるりと振り返った。
え。うそ。
「和泉さん?」
え、え、え。
ほんとに、ほんとにこっち向いちゃった!
びっくりして嬉しくて、息が弾んで視界が白んでゆく。
目の前にいるのに、風間くんがよく見えない。
なんだろうなんだろうなんだろう?
すみません、念を送ってたくせに、ちょっとまだ心の準備ができてなかったんですけど。
「ーーーよ?」
「え?」
「先生。呼んでるよ、さっきから」
「へっ?」
先生、というワードにハッとして前を見ると、呆れ顔の数学教師と、不思議そうにしているクラスメイト達が私を見ていた。
「なーにボーッとしてんだ。
さっさと書け」
「あっはい、すみません!」
教師はため息をつき、問一を解いていた吉橋くんと談笑を始めた。
私は慌ただしく立ち上がり、黒板の文字とノートを見比べる。
けれどもちろん、まともに問題なんて解いてない。
や、やばいっ!
軽くパニックになったところで、スッと差し出された一つのノート。
整然と並んだ数式。
読みやすい右上がりの文字。
「特別」
風間くんは立てた人差し指を唇の前に持っていき、「ナイショね」と言いながらイタズラに笑った。
ーーあぁもう、やられた。
私は下を向いて、赤くなった頬を必死に隠しながら、震える手でノートを受け取った。
ーーちくしょう惚れ直しちまった。
***
「6.振り向け、振り向け。」 end.