甘い香りを待ち侘びて
でも今年は違った。
ヒロくんは何とか時間を作ろうとしてくれていた。少しの時間だけど、お店から抜ける時間を作る目処を立ててくれていた。
すごく嬉しくて、本当に浮かれていた。
いつもは遅れて渡すクリスマスプレゼントを今年は当日に渡せる。何より他の恋人たちと同じように、特別な雰囲気が世界中に漂う日に会うことが出来る。
これほど嬉しいクリスマスプレゼントはないと思っていた。
だけど結果は……ダメだった。
所詮期待は、この町に降る泡雪のようにいとも簡単に消えてしまうんだ。
もう、サンタさんを待ち侘びるような子供ではないと思っていたけれど。わたしはまだまだ、大人になりきれていない子供だったのかもしれない。
素直にサンタさんを喜ぶ子供の方がまだ可愛らしい。
こんなにも彼氏のことで一喜一憂してしまうような、中途半端に強がっていた大人よりずっと……。
部屋の飾りつけの片付けを終えて窓の外に目を向けると、ちらちらと白いものが舞っていた。
「雪降ってきましたね。今年はホワイトクリスマスみたいです」
マコちゃんの声が弾んでいる。まだ素直にはしゃげる年頃で良いなと思った。
「……そうだね、珍しくホワイトクリスマスだ」
真冬でも滅多に雪が降らないこの地方。
たぶん、ホワイトクリスマスというものに憧れている人は少なからず多いはず。わたしだってその一人だ。