魅惑のキスネコ!【完】
そうこうしているうちに
あたし達は数時間掛けて
園内を見終わってしまった。
お土産やさんに立ち寄り
ぬいぐるみとかを手に取りながら
ふと入り口のポパイを見る。
ポパイは相変わらず
園内に目を向け人の流れを見ていた。
この、ただあたし達に
ついてきている感。
遊園地に来てからずっとこうだ。
変に落ち着いていて
ただただ時間が経つのを待っている。
でも、それだけじゃなくて
ポパイには変な緊張感もあった。
その緊張感が、あたしの神経を
するどく揺さぶっている。
この嫌な予感は
そこから来ているんだ。
ポパイの雰囲気はどちらかというと
物ではない何かを待っているかのよう。
例えるなら
動物が擬態しながら餌の獲物を待つような。
時が来るのを待っている
そんな風に感じる。
「カナさん、何買うか決まりました?」
サヤカちゃんが声を掛けてきた。
「あ、うぅん、
あたしはいいや。」
お土産を考える余裕なんてない。
「?カナさん、
なんか元気ない・・・ですか?
疲れちゃいました?」
「いやそんな事ないよ。
サヤカちゃんはもう買ったの?」
「今レジに行こうと思ってたところです。
じゃぁ、買ってきちゃいますね!」
そう言うとサヤカちゃんはパタパタと走り去る。
その背中を送り届けて
あたしは持っていたぬいぐるみを棚に戻した。
そしてポパイの居る入り口に歩み寄る。