魅惑のキスネコ!【完】

「カナ、座って待ってよう。」

ジンにそういわれたけど
あたしは頭を横に振った。

その場から一歩も、
動く気がしなかった。

動きたくなかった。

処置室の意味がわからない。

手術前に行く部屋?
手術の後に行く部屋?
それとも手術ほどじゃない人が
ここで軽い処置をしてもらう部屋?

一体、中では何が行われているの?

一番嫌な可能性はあえて考えない。

それを言われたら嫌だから
この部屋の前に案内された事の意味を
ジンにも聞かなかった。

沈黙が廊下を包む。
時折、誰かをよぶ放送が流れたりした。



カチャ・・


扉のノブをひねる音に
あたしとジン、
そして警察官もドアに目を向ける。

中から看護士が出てきた。


「お待たせしました、どうぞ。」

彼女らの表情は
まったくといっていいほど無表情だ。

その表情から
部屋がどうなっているのか
汲み取ろうとしていたあたしは
なにも掴めずに歩みを進める。


心臓が高鳴る。
怖い。
やっぱり怖い。

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