魅惑のキスネコ!【完】

部屋の真ん中にはベッドが一台。

その上にあるものを包み隠すように
白い布が掛けられていた。

小さなサイドテーブルには
蝋燭が一本。

それだけが、この小部屋にはあった。



足がガクガクと震える。

そんな、嘘でしょ。

違うよね。


竦むあたしから手を離し
ジンが頭上の布を
ゆっくりとめくる。

そして、それをまた元に戻し
看護士の方へ振り返った。


「はい、間違いありません。」

看護士はジンのその言葉を聞くと
お辞儀をし、やっとその場を離れた。


静まり返る小部屋。


ジンがあたしのそばに
ゆっくり歩み寄る。

「カナも、顔みてあげて。」

あたしはガクガクと振るえたまま
首を横に振った。


「カナ・・」

「っい・・いやっ・・!」

動かないあたしの背中を
ジンはそっと撫でる。

「ゆっくりでいい、
でも彼の為にも
見てあげたほうがいい。」

ジンはあたしの手を支え
震える歩にあわせる。


あたしはベッドに横たわるそれに
ゆっくりと近寄った。

小さい布の下に
顔の輪郭を見る。


・・っ・・はぁ・・。

自分の呼吸が
激しくなるのを感じる。

ジンが、ゆっくりとその布を摘んだ。


・・・はぁっ・・はぁっ・・・

そして、布の下の顔が露になる


「ッ・・・!!
しゅ・・ん・・・・!」

そこには綺麗な、
眠っているようなシュンの顔があった。



はぁっ・・はぁっ・・はぁっ・・・

あたしは苦しくなり自分の胸元を掴む。

足元がぐらりと曲がり
そのまま倒れこみそうになった。

「カナ・・!!」

ジンの声を聞きながら
自分が倒れそうな事に気づく。


嫌だ。
こんな現実、嫌・・・。


あたしは自分から望むかのように
そのまま気を失った。


< 242 / 255 >

この作品をシェア

pagetop