魅惑のキスネコ!【完】
あたしがリビングに戻ると
サヤカちゃんがこっちに振りむいた。
「ポパイさんは・・?」
サヤカちゃんの問いに、あたしは”帰ったよ”と答える。
ジンはそれを聞いて、ほっとした素振りをみせた。
そして立ち上がると伸びをする。
「じゃぁ、支度して出かけるか。」
サヤカちゃんが不思議そうにジンを見上げた。
「なんで??」
「もう一人の・・いや、一匹のポパイのためだよ。」
ジンはあたしをみて微笑む。
いつもの、優しい笑顔だ。
あたしはジンの言葉に付け足すように
サヤカちゃんに説明した。
「うち、ネコを飼ってるんだけどすっごい人見知りで。
人が居ると出てこないんだ。
だからこうやって、休みの日はあえて外に出てあげてるの」
サヤカちゃんはへぇーーっと感心すると
じゃぁ、と言って慌てて身支度をする。
「ま、正確には僕の前にだけ出てこないんだけどね。」
ちょっと自虐的にジンが言うと
サヤカちゃんがすぐ反応した。
「え!お兄ちゃん、飼いネコに嫌われてるんだw
あたしの前には出てきてくれるかな?」
「僕が居なければ、きっと出てきてくれるよ」
「ネコの名前はなんなの?」
「だから、ポパイだよ」
「え!そうなの!?
あ、だからさっきの人
自分の事ポパイって言ったのかな??」
「さぁね;」
「ポパーイ!ポパーイ、出ておいでー」
「だから無理だって。
僕が居るから。」
ポパイ(ネコ)を呼ぶ無邪気なサヤカちゃんは
声をかけてまわったけどもちろん、ポパイは出てこなかった。
「徹底的にポパイに嫌われてるね、おにいちゃんw」
「うるさい!」
こつんっと頭を小突かれ
サヤカちゃんはえへへっと笑った。