カーテンの中で
「そんなんじゃない『けど』……なに?」

訊きながら、彼はメガネを外した。

銀縁の、オシャレなメガネ。その向こう、さらっとした黒髪の内から、彼の茶色い目が私を見つめてくる。

放課後、職員室にプリントを出しに行っていた彼を待っていたおかげで、教室に二人きり。

もう校舎に人はいない。

グラウンドで汗水垂らす野球部やサッカー部の声だけが、人の気配だ。

「『けど』……なに?」

と彼は質問を繰り返しながら、私に歩み寄った。

つい、じりりと後ずさってしまった私の背中が、窓ガラスに当たる。
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