昼の月
朝食と着替えを済ませ鉢植えに水をやる。このポインセチアは、去年の冬母が訪れた際に置いていってくれたものだ。あれからもう一年近く母には会っていない。
大学に進学して家を出てから、私はほとんど実家に帰っていない。両親はそれについてなにも言わなかったし、これからもそうなのだろう。
椅子に腰掛けてぱらぱらとノートをめくる。昔から考え事をするときはこうするのが癖になっている。ケータイや、パソコンではだめなのだ。
だからこのノートには、徒然草風に言うと、“心に移りゆくよしなしごと"がそれこそ本当に“そこはかとなく”書かれている。
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