昼の月
だれの、おかげだろうか。ふと、そんな考えがよぎった。私が心の芯を曲げずにいられたのは、だれのおかげだろう。私は今日までを、平坦に生きてきた訳ではない。だれかの支えなしで己を貫いて生きられるほど、私は強い人間ではない。
ノートを見ればわかる。私の思春期も、大抵のひとがそうであるように、危ういものだった。思春期の人間というのは、綱渡りをしているように危なっかしく、土をこねて作った人形のように脆いものだ。事実、私もリストカットを繰り返し、一時は不登校になり精神科へ通っていたほどだ。そんな私が、どうにかこうにか大人になって、社会の一員として生活できているのは、私だけの力では断じてないのだ。
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