昼の月
それに気付いたのは、決して今が初めてではない。一人暮らしを始めたばかりのころ、家に帰ると温かいご飯が用意され、ふかふかの布団が敷かれていた実家暮らしに、母の愛があったことに気付かされた。実家を出るとき持ってきたクラシックのCDは、高校生のとき父がくれたものだ。ほとんど喋らない父が、珍しく私の部屋をノックして、おまえが好きそうだから、とくれたのだ。それから、ファイリングされたたくさんの手紙。先生や友だちと交わしたものだ。パソコンが使えるようになっても、私はメールを使わず、手紙を書いた。時に文字が震えたり、涙で滲んでしまったりしたものだ。届く便箋はその人の人柄を表し、それは私を楽しませた。
死にたい、と、本気でそう願った日。泣きながら抱きとめてくれたのは、名前も知らない他人だった。
生かされてきたのだ、私は。生まれてきたその日から。
死にたい、と、本気でそう願った日。泣きながら抱きとめてくれたのは、名前も知らない他人だった。
生かされてきたのだ、私は。生まれてきたその日から。