昼の月
突然風が通り抜けて、ノートをめくった。何気なく目を落として、そこに貼られていた写真に魅了された。
「昼の、月…」
青い空にぽつんと、まるで雲のように浮かぶ真っ白な月。
保育園の帰り道、母と手を繋いで帰った遠い日。青空に月を見つけたときの驚き。
「ねぇ、ママ!昼間なのに、お月様が出てるよ!」
母は優しく微笑んでいた気がする。
「お月様はね、ずっとお空にあるんだよ。昼間見えなくても、いつもお空にあるんだよ。」
確かそんなようなことを言っていた。
幼い私は驚いた。“見えない”ことは、“ない”こととは違うのだと、その時初めて知ったのだ。
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