永遠(とわ)に果てぬ愛
「社長、お出かけの時間です」
「ああ、行くよ。
今日は、和奏ちゃんも一緒か」
佐々木さんの隣にいた私に気づき、優しく笑う。
「はい。今日はご一緒させていただきます」
こうやって、佐々木さんと共に社長である怜央のお父さんについて回る。
そして、少しずつ秘書の仕事を覚えている。
この時だけ、余計なことを忘れていられた。
言い寄ってくる人たちとは別の場所にいられるから。
それに、直帰出来る。
だから、夜誘われようが、行くはずもないんだ。
連絡先も知らなければ、家を知っているはずもない。
だから、秘書補佐で外へ出てしまえばこっちのものだった。
「ただいまー」
誰もいるはずがないのに、声をかける。
これはもう癖だな。
ため息を吐いていると、奥でガタンと音がした。
そして、気がついた。
玄関に靴が置いてあるのを。
「お帰りー」
バタバタと音がしたかと思うと、勢いよく抱きついてきた。
「怜央!?何でいるの?早くない?」
私より早く帰ることなんて、めったにない。
残業は当たり前なのに。
「聡さんが早く終わりそうだって教えてくれた。
だから、オレも早く終わらせた」