永遠(とわ)に果てぬ愛



携帯を見ながらそう思った私は、早々にトイレから出た。

だけど、帰れなかった。

トイレの前で、林さんが待ちかまえていたのだ。



「何をしているんですか?」



私を通らせないようにしているのが分かったけど、一応聞いてみる。



「ねぇ、2人で抜けない?」



私の耳元でそんなことを言ってきた。

だいたいの人は、コレで堕ちるのだろうか。

相手がいる私には、通用しないけど。



「抜ける意味がありません」



いつも通り冷めたように言って、林さんの横を通ろうとする。

だけど、思いっきり腕を掴まれてその場から動けなくなってしまう。



「ちょっと、離して下さいっ」



腕をぶんぶん振りながら言うけど、林さんの手は離れるどころか強く掴まれる。

しかも、痛いぐらいに強い。



「い、痛いですっ」


「いつもみたいに逃げれると思うんじゃねぇーぞ」



急に口調が変わった。

どうやら、コレが林さんの本性らしい。

そして、私は今ヤバイ立場だ。

トイレの前で、人目につきにくい。

赤の他人から見れば、カップルの喧嘩にしか見えないだろう。

誰も助けてくれる人がいない。




< 559 / 620 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop