永遠(とわ)に果てぬ愛
その時だった。
私のあいた手が、グイッと後ろへ引っ張られたのは。
完全に油断していた林さんの手から、私はするりと抜けて、別の人に引き寄せられた。
「何をやっているんですか?」
不機嫌そうな低い声、でも聞き慣れた声が聞こえた。
声の方を見上げると、やっぱり見知った人がそこにいた。
「越智くん?どうしてここに?」
「僕も偶然ここに来ていたんだよ。それで、トイレに来たらこんな場面に遭遇した訳」
私の手を引っ張ったのは、越智くんだった。
その表情は、めちゃくちゃ不機嫌そうだった。
「君、確か越智悠真くんだよね?」
越智くんに対して口調が戻っていた。
実は、越智くんも怜央のお父さんの会社で働いている。
もちろん、常務の息子だってことは黙ったまま。
部署は違うけど、林さんは知っていたらしい。
「邪魔しないでくれるかな?
俺と彼女のただの痴話喧嘩だから」
優しい口調で、平然と嘘を吐く。
なんて人だろう。
越智くんは、私を見て首を傾げる。
「水城、いつの間にあんなヤツと付き合っていたの?」
「何を言っているの?
嘘だってこと、越智くんはよく分かっているでしょう?」
そう言って、2人顔を見合わせて笑った。