婚恋

本当の気持ち

藤堂君が帰ってきて以来、バンドの練習の回数が徐々に増えた。
しかも生き生きしている。
どうやら藤堂君に彼女が出来たらしい。
はっきり聞いた訳ではないけど
時々綺麗な女の人がスタジオに差し入れをしてくれるのを
何度かみたから。

松田君はけっこうかっこいいのに彼女がいるって話を聞いたことがない。
藤堂君がふざけて
「女より男の方が良かったりして」って言ったら
好きな人がいるって言うのは聞いたけどそれ以上の事を
聞いても答えようとしていなかった・・・みたい。

そして陸は・・・・
百恵さんと順調・・だと思う。
別れたって聞いてないし
元々自分のから話す方ではないみたい。
聞かれたら答えると言った感じだ。

私は・・・・
何もない。
いい事も悪い事もなかった。

だがそんな何もない私に・・・転機が訪れた。

その日仕事を終えて家に帰ると・・・
「春姫宛に何か手紙が届いているわよ」
一足先に帰った母から受け取った封筒の差し出し人を見て私の手は止まった。

そこには陸と百恵さんの名前が書いてあった。
まさか・・・!
手が震えて心拍数も上がってる
落ち着かない・・・
そんな状態のなか封を開けると
やはりそれは結婚式の招待状だった

結婚するんだ・・・

先週練習があったけどそんな事一言も触れなかったし
そんな素振りは何もなかった。

なんで?
どうして?
先週練習で一緒にいたんだから言ってくれてもよかったじゃない。

なんでだろう・・・
手の震えが止まらない。
胸がどーんと重くなる。
どうしておめでとうって喜べないの?
それどころか招待状の内容に拒絶反応を起こしているみたいだった。

高校の時から陸は自由人だった。
特に恋愛に関しては特定の人を作らずだった。
何かトラブルが起きると
私を盾に逃げてきた。
そんな陸が私は嫌いだったし
陸みたいな人を好きになんかならないって思っていた。
私の事には無関心で
ほとんど無反応
それなのに陸に助けを求められると
私は陸を助けてきた。
そしてそれが当たり前の様になっていた。

きっとこれから先もそうなるのだろう。
ずっと・・ずっと

だから陸が結婚するなんて考えてなかった。

それが・・・何の前触れもなく突然結婚だなんて

嫌だ・・
嫌だ・・・

その時初めて自分の気持ちに気付いた。

私は陸が好きだって事を・・・
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