婚恋

裏方と言う選択

「えええ?!そんなに長い付き合いだったの?」
「高校時代から陸と同じバンドのメンバーで友達と言うよりは
仲間って思ってました。」
「そんな長い付き合いの間、何にもなかったの?男と女だよ。
 椎名君以外のバンドのメンバーだとかさ?」
藤田さんの質問は多分半分心配、半分好奇心何だろうな。
でも彼女には自分の惨めな部分を全部見られてしまっているから
恥ずかしいと思う気持ちはあまりない。
「・・・・1度だけあった」
藤田さんは急に身を乗り出してきた。

「実は結婚がダメになったじゃないですか・・・紺野さんから白紙にしてほしいと
言われた日に偶然、陸・・椎名君から電話がかかってきたんです。普段そんなに電話をしてこない
陸が・・・・その時にキスされた」
「ええええ!何で?」
「それはこっちが聞きたい。今だに謎です」
「謎って?」
「ショックでひたすら走ってたら電話かかってきて、探しに来てくれて
椎名君のマンションで愚痴ってたら・・・抱き締められて・・・キスされて
とにかくいきなりでこっちはびっくりで・・・そのまま帰っちゃったんです。
だって・・・その時陸に恋愛感情なかったし・・・」
藤田さんは手に持っていたレモンチューハイを一気に飲んだ。
「嫌いじゃなきゃ・・・キスなんかしないわよ」
「え?」
「男と女じゃ考え方が違うから断言はできないよ。でもさ、泣いてる春姫ちゃんみてたら
抱き締めてキスしたくなっちゃったんだよ。なんか同情じゃない様な気がするんだよね。
・・で?その後何か進展はあったの?」
「全くないまま、久しぶりに会ったら彼女が出来てて、あれよあれよと招待状」
大きな溜息と共にふ~~んと言うと、藤田さんは何かを考えている様だった。
「藤田さん私どうしたらいいのかな?招待状来てるの。出席か欠席か・・・」
「ああーあ。プラス仕事もはいちゃったしね」
「欠席すれば角が立つし出席したらしたで笑っていられる自信もないんです」
何の解決策も見いだせず
どんよりとした飲み会になってしまった。
「あのね・・・これあんまりいいたくないんだけどさ・・・
相手が春姫ちゃんだから言っちゃうんだけど・・・新郎の椎名さん?
なんか結婚に消極的というか・・・関心がないというか・・・
新婦の百恵さん?彼女も何だか妙にテンションが高いって言うか・・・
今までいろんなカップル見てきたけどぎこちなさを感じるのよね。
ん~~。それが春姫ちゃんと関係あるのかは何とも言えないけどね・・・
式の日取りだってやたら早くやりたいって感じで・・・」
「でも・・・結婚するんだよね」
「アハハ・・・そうよね・・・」
昔から陸は恋愛に関しては積極的じゃない人だったから藤田さんの
話にあまり疑問は持たなかった。

店を出て帰る時に藤田さんに言われた。
「ブーケの仕事がはいっているからさ、欠席にして裏方に徹するって
言う選択肢もあるから・・・あんまり自分を苛めないで。」

裏方か・・・・

空を見上げるといつもと変わらぬ場所に月は私を上から見下ろしている。
「黙って見てないでたまにはなんかアドバイスしてよね」
月にまで愚痴るってどうなの?私って


家に着き自分の部屋の机の上に置かれた招待状を手に取った。
席に着かなくても仕事として披露宴のお手伝いするなら
欠席でもいいよね。
ちゃんと理由を書いて・・・・
私は引き出しからペンを取りだし欠席に○をつけようとした。
するとスマホが鳴った。
相手はなんと陸からだった。
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