婚恋

即席の思いで作り

「ねぇ~!陸?何処に行くの?」
陸は車に私を乗せると私の家の方へと車を走らせた。
「ねぇ~ってばー。教えてくれなきゃわからないじゃない!」
「・・・春姫んち」
陸は運転しながらな答えた。
「私の家って・・・・行って何すんの?」
「・・・思い出作りだって!」
それだけ言うと私が何を質問しても完全にスル―だった。

家に着くと陸は私に
服をいくつか用意しろと言った。
「だから、服を用意して一体何をするの?」
「さっき見せたDVDじゃ俺らがラブラブだって事が全く伝わってないと
思わなかった?俺達結婚するんだよ。だったら少しでも2人で
楽しん出るところを見せる必要があるだろ~」
確かに2ショットなんかほとんどなかったが
だからと言って服を・・しかもいろんなバージョンでそろえろ
って一体何を考えているのかわからなかった。
「・・・・どのくらい必要なのよ」
なんだか陸が急いでいる様だからこれ以上の事は言わず
要件だけを聞いた。
陸は口角を上げると
「どのくらいでもいいよ。それと・・・着替えも頼むよ。
春姫の一押しのをね・・・。俺は車の中で待ってるから」
陸は片手をヒラヒラさせながら家を出た。

「一押しって・・・・なによそれ」
口をとがらせながら呟いたものの
陸が楽しそうに春姫の一押しのをねっと言うから
ドキッとした。
あんな言い方反則よ。
私は胸の高鳴りを抑えるようにクローゼットを開けた。


コンコン・・・
車のガラスを軽く叩くと陸は車から降りた。
「荷物を後部座席にー」
陸はその場に立ち尽くしていた。
「陸?」
陸はハッと我に返り私の持っていた荷物を奪う様に掴むと
後部座席にそれを置き、ドアを閉めた。
「お前・・・それ・・反則だろ・・・」
「え?何?」
「・・・何でもない・・早く乗れよ」
聞こえるか聞こえないかわからないように呟くと助手席のドアを開けてくれた。
陸の言葉は私の耳には全く届いていなかった。

・・・せっかく一押しの服を着たのに何も言ってくれない。

アイスブルーの膝上10センチのフレアーワンピに薄いグレーのモヘアのカーデ。
グレーのタイツに同系色のパンプス。
私にしては随分頑張った。
それなのに・・・・横を向けば陸はただ真っすぐ前を見て運転してる。
・・・どうせ、陸の頭の中にも心の中にも私なんかいないんだよね。
そう思ったら何だか虚しくなってきた。

一瞬だけ結婚相手を引き受けた事を後悔した。

「・・・・似合ってる・・・」
信号が赤になった時だった。
「え?」
「・・・こんなかわいい姿初めて見て・・・なんて言ったらいいか
 その・・わかんなくてさ」
だめ・・・ちょっといきなりそんな事言われたら
ドキドキしちゃうじゃない。
何にも言われなきゃ怒れちゃうけど言われたら言われたで
ドキドキしちゃうし・・・・
「あ・・・ありが・・とう」
きっと私凄く顔が赤いよね・・・
こんなんじゃ私の気持ちがばれちゃいそうで
私は咄嗟に横を向いた。

走る事1時間。
ついた場所はフラワーパークだった。
「やっぱ春姫っていえば花かなって思ってさ・・・。ここで
 誰かに2ショット写真を撮ってもらおう。」
・・・そうだった。
さっき陸に服を褒められて頭の中がお花畑状態で忘れてたけど
本当の目的は恋人だった事の証拠写真を撮ることだった。
そのためいくつかのシチュエーションで2ショット写真をとり
それを結婚式の時に披露するんだった。

思い出も・・・即席で作れるんもんなんだと思ったら
少しテンションが下がった。
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