レンアイ不適応者
「藤峰さん?」
「…なんとなく、こうなるような予感はしてましたけど、私が悪い…ですね。完全に。」
「え、なんで?」
「だって山岸先生にとっては気にするまでもないことだったわけですよね?てことは私がただ気にしすぎてただけってことじゃないですか。」
「いやまぁ…俺は慣れてるから。」
「え?」

 雅人が困ったように頭を掻いた。

「男子会はもっと凄いんだよ…。もっとえげつないことたくさん言われてるし。だから藤峰さんよりはマヒしてると思う。」
「そう…ですか…。」
「って俺のことはどうでもよくてさ。藤峰さんは嫌だったんでしょ?何が嫌だったか聞くよ。話して?」

 こういうことをさらっと言えてしまう(しかも下心がない)のは本当にずるい、と杏梨は思う。思わず涙腺が緩んで、見せてはいけないものがこぼれ落ちそうになった。それを意地だけでなんとか堪える。

「私が…歌った、アンサーソングで…。」
「てかアンサーソングって、なんでそういう流れになっちゃったの?」
「こっちが聞きたいですよ!でも渥見先生がノリノリになっちゃったので逃げ場なかったです。私、それいれたら帰りますよって言ったのに!」
「うーん…そっか。でも多分渥見先生はノッちゃうな。悪気ないんだろうけど。」
「……それも、知ってます。」

 悪気がないから良いということでもないけれど、素直に憎むことができないのも、渥見先生の魅力であることは否定できない。

「それで、歌ったよね?歌詞変えたの?」
「まさか!私じゃなくて、周りが勝手に山岸ーって叫んでましたけどね。」
「まじかー!そこには気付かなかった。」
「説教タイムでしたもんね。」
「でもごめん。俺が最初にのらなければ藤峰さんもアンサーソングとかにならなかったわけだもんね。」
「いや…、山岸先生のせいじゃないです。謝ってほしいわけでもなくて。…折り合いをちゃんと自分でつけれれば良かったんですけど…。」

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