俺様王子様に振り回されて
『怪我ないなら良かった。』



森井が、私に柔らかくそう言うだけで。


ほわっと胸が温かくなる。




単純だとは思うけど、しょうがないだろう。







そして、その言葉で私は理解する。



森井は、私が怪我をしないように、庇ってくれたのだと。







森井は、いつ変えたのか分からないが、私の体の向きを変えていた。


私を、窓側に正面を向くようにして。


森井は私を、正面からがっちり抱きしめていたんだ。









嬉しくて、温かくて・・・勘違い、しそうになる。



森井の優しさに、自惚れてしまいそうになる。




もしかして、って。





やっぱり私は単純だ。


これだけで、希望が持てるのだから。










未だにがっちりホールドされている両腕。


けれど、ひじより下は、かろうじて動かせる。



だから私は、そっと森井の制服のを掴んだ。





森井が、私に視線を向けたのを感じる。


少し、森井の腕が緩む。



私は、ほんの少しできた隙間から、森井を見上げて、笑った。





「また、助けられちまったな・・・。

ありがとう。」




穏やかに、今の気持ちを素直に笑顔に乗せることができた。







森井は、ただ、笑った私を見つめていた。

じっと。




そんなに見られると、私だって恥ずかしくなる。


だから、パッと俯けば、くいっと顎を上げられた。





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