俺様王子様に振り回されて
もんもんと考えていれば。



「あ、噂をすれば、石原じゃん。」


アキの声に、前を見れば。





教室のドアから、一瞬、廊下を全力疾走している石原が見えた。



って、何事だよ。



そう、廊下に視線を向けていれば、

今度は例の数学教師が、廊下を全力疾走しているのが見えた。



勿論"例の数学教師"とは、石原にキスしようとしてた奴のこと。






・・・まさか・・・



嫌な予感が足先から這い上がってくる。





「あれって確か・・・椎野(シイノ)先生だったよね?

女子に人気の、若いカッコイイ先生。


石原、なんか悪い事でもしたのかなぁ。

でも、石原スッパリ足洗ったって羽依言ってたけどなー」



首を傾げるアキ。




俺は"嫌な予感"がどんどん膨れ上がっていくのを感じていた。







――石原茜は中学の時ヤンチャしていたらしい

・・・というのは、もっぱらの噂だ。



だから、アイツは怖れられてる。


今でも。




おそらく、そんな状況だからこそ、

飯田に執着するんだと思う。


"親友"と言って、笑ってくれる飯田に。





飯田だけに見せる、穏やかな表情――


アレを俺に向かって、見せて欲しい。




と同時に、アイツの笑顔を、無くしたくない。


そう、思った。






考えるより先に、体は動いていた。







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