俺様王子様に振り回されて
アイツには、笑っていてほしい。

いつでも。



その想いは――偽りなんかじゃない。






俺は、アイツらの向かった方向に、走り出した。



「え!?ハルッ!?」


そんなアキの、驚きの声を、背後に聞きながら。











どこにいるのかなんて、分からない。


方向しか、分からない。




それでも。







"追いかけろ"



心が、命じてる。









―――偽りなんかじゃない。



俺は、アイツに笑っていてほしいんだ。


俺のそばで。
















・・・こんなに、全力で走ったのは、いつぶりだろう。



誰かのために走るのも、いつぶりか分からねぇ。






がむしゃらに走っていれば。



昨日の朝、石原を抱きしめた、あの、空き教室に、

例の数学教師の後頭部が見えた。



例の数学教師の後頭部で、アイツの顔が見えない。







―――ッ・・・間に合え!!!




ガラッと、勢い良く、ドアを開けた。






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