私たちで奏でる物語
――スタートダッシュは完璧だった
けれど私は足が速い訳じゃない
結局陸上部だの二人抜かされ、三着で金田君にバトンを渡す結果に
「金田君!」
私は今までに無い大声で『彼』の名を叫んでいた
金田君は驚く半面、嬉しそうに笑い、パス区域の始まりギリギリで目一杯手を伸ばし、私を待ってくれた
「……任せろ」
バトンを渡した時、金田君が小声が私の耳に届く
ちゃんと聞き取る暇さえ与えず彼は一大の疾風になっていた
何の躊躇いも圧力も無い彼の走りは、観客を釘付けにするかと思えば既に悠々とゴールテープを切っていた