私たちで奏でる物語
――――放課後
「あ……の。り、龍君」
帰る用意をしている龍君に話しかけた
「どした?」
「えと、その……こっ、これっ!!」
私は龍君に膨らんだ茶封筒を手渡す
「――これは?」
龍君は錠の掛かった箱を前にした無邪気な子供の様な顔をした
「那斗君から聞いてて!幾つか作って……みました――」
私は緊張のあまりか顔が上げられない
龍君は封を切り、中のホッチキス止めの束を無言にパラパラと繰っていった
数秒の沈黙が流れた
「……いいじゃん」
龍君は笑顔で言い、俯いた私の頭を優しく撫で
「ありがとな」
そう言い、教室を出て行った
(…………嬉しいっ)
私は両手で頬の熱を感じ取った
曲がいいと、褒められた事
それから――頭を撫でてくれた事
すべてに多大な《幸せ》を感じた
その日から模擬店準備とバンドの練習で私の日々はさらに忙しくなった