*天使の贖罪-勿忘草-*
「なんであなたがそんな顔をするのよ。泣いてしまいたいのはこっちよ」

彼は黙ったままでした。

「いいから、もう・・・」

そう言いかけたとき、強風が私達に吹き上げました。

足元がぐらつき、私はバランスを崩してしまいました。

柵を乗り越えていたため、崩れたバランスで真逆さまに落ちていくことになります。

でも、なぜか体が何かに支えられ、ビルから落ちることはありませんでした。

なぜなら、彼が私の腕を引っ張っていたからです。

「早く、柵に掴まれ」

彼にそう言われましたが私はこれを機に死んでしまったら楽なのでは、という考えと、彼に従うのがなぜか悔しかった、という理由で柵に捕まりませんでした。

「早くしろ!死にたくないだろ・・・!!」

崇宏さんは必死な目で私を見ました。

あの時、私が柵を掴んだのは運命的なものだったのでしょうか?

柵を掴んでいなかったら、今の私はいなかったかもしれませんね。
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