*天使の贖罪-勿忘草-*
綺麗な彼女がいて、仕事もそれなりに充実していて、順調な毎日を過ごしていた。

そんなある日、俺に転機が訪れた。

付き合い始めて9ヶ月が過ぎ、俺達は互いの家を合鍵で訪れ合っていた。

その日もいつものように俺は合鍵でサナの部屋を訪れていた。

すると玄関にサナの靴と見慣れない男物のスニーカーがあったんだ。

『そんなわけない』て自分に自己暗示みたいなものをかけながら部屋にそっと入った。

するとリビングのあたりからサナの声がした。

電話でもしているのがろうか?

俺はそう思うようにした。

だが次の瞬間、俺は同じリビングから男の声を聞いたんだ。

静かに覗いてみるとサナとサナの肩を馴れ馴れしく抱く、俺の知らない男が座っていた。

俺はキッチンにあったガラス性の煙草の灰皿を手に取り、また静かに二人のところに近づいていった。

俺は俺が思っている以上にサナを愛していたんだ、とこのとき知った。

俺は持っていた灰皿を思い切り上に振りかざして、そのまま男に目掛けて振り下ろした。

ゴッ。と鈍い音と共に男は倒れた。

頭から大量の血を流しながら。

するとサナが倒れた男を見て悲鳴をあげた。

「や、やだ。ひっ。近寄らないで!」

サナは俺を化け物を見るような目で見た。

それから暫(しばら)く記憶がない。
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