*天使の贖罪-勿忘草-*
晴天だったな。

あの日、未羽那は自殺をしようとしていた。

マンションの屋上にたまたま居合わせていた俺は目の前で人が死のうと柵を乗り越えて立っているのを見て、不謹慎かもしれないが綺麗だと思った。

「や、やめろよ」

だが、止めない訳にもいかないのでそう声をかけた。

すると顔だけをこちらに向かせた。

色素の薄い目と、色白な肌は漆黒色の長い髪を引き立たせていた。

少しばかり目を奪われてしまったのを覚えている。

お前は僕を怪訝そうな顔で見ていた。

「あんたに関係ないでしょ」と言いたげだった。

でも俺はこの出会いを運命だと思った。

未羽那と俺が恋仲になるのに時間は掛からなかった。

だけど、曖昧な関係だった。

言わば友達以上恋人未満。

だから手を繋いだ事も、勿論キスをしたこともなかった。

ただ毎日一緒に過ごし、他愛のない会話を日が暮れるまでしたこともあったよな。

でも、そのたびに俺は罪悪感に苛まれていた。
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