サンタX

ブスっくれた顔で書類を受け取りに行った正美に紺野が訪ねた。

「今から行くのか。一人身が寄り集まった寂しくも虚しいクリスマス会。」

「…………いいえ。」

もはや行く気はなかったが、紺野のキャッチコピーには行く気があっても『いいえ』と応えただろう。

井上の情報は社交辞令でもガゼでもなかったらしく就業前、幹事とやらがやってきた。

だがそのタイミングで―――

『鈴木。書類に問題がある。直して今日中に提出してくれ。』

正美の隣である新人・鈴木に紺野が書類を持ってきて言った。

途端、鈴木は泣いた。

否、紺野が号泣する程怖かったワケではない。

『で…でーと、なんです。彼、珍しくガンバってステキなお店予約してくれて……』

あー。うー。

嗚咽交じりの説明に正美は溜息を吐いた。

『…いいよ。私がやるし。』

『で、でもっ…。仕事ですからっ…。す、スミマセン泣いちゃって。どうしようって思ったらちょっとパニックになっちゃっただけですからっ…』

『……イイカラ。今日は大人しく帰ろーか、鈴木チャン。』

その幸せな悩み、発作気的に首を絞めてやりたくなるほど羨ましいからさ……。

『『『…………。』』』

口にはしなかったけれども、正美のその殺気を感じとったらしい一同は大人しく口を噤んだ。

そんなワケで、自動的に飲み会はキャンセル。
残業、という事になった。

うん。いいのよ。
仮にも私、鈴木の上司なわけだし。
どうせ、残業になって困る予定なんてないしね。

ガンバって誘うと言っていた幹事がガッカリして帰って行く姿を見られて、それだけでちょっと浮かれられたしね…。

正美は気もそぞろに書類を受け取りながら、首を捻った。

結局、あのメモ、誰だったんだろ?

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