サンタX
幹事に聞いてみたが知らないと言っていた。
それにあの時、気になった事が一つ……
『あ、あの加宮さん。今夜何かご予定があるって伺いましたが、もし違うなら会社の一人身が集まる飲み会があるんですけど――――』
私に、どんなご予定が?
あの幹事は一体誰に何を伺ったというのだろう…
それに、今更だけどあの字。私どこかで見た事ある―――
「…よし。」
正美の思考は唐突なそんな声に遮られた。
見れば紺野がパソコンを片付けていた。
「仕事は終わった。行くぞ。」
「は?行くってどこに?」
「予約してあるだろ。」
「は?予約?え?してあるだろう?って、何を?なんで?」
「何故と言われればクリスマスイブだからであろうな。」
意・味・不!!!
頭上にハテナを連発させながら正美はコートを羽織って歩き出す紺野を追いかけた。
「あけとけって伝えておいただろう。」
「――――はぁ!?あれ、紺野先輩だったの!?」
意外過ぎてビックリ。
否、何のメモかと訝しがる正美を見て愉しむつもりであんな中途半端なメモを残したのだとしたら、そんなくだらない悪戯をするのは紺野以外にないけども。
でも。
クリスマスイブに誘うって。
ちょっと、ねぇ?
誤解しますけど?
よく悪戯されはしたけど…
そんな素振りは全く今まで……ねぇ?
途端ぐっと腕を引かれて必要以上に前へのめる。
紺野の腕の中へ。
柔らかなその温かさに正美の胸がドックンと高鳴った。