サンタX
これまで紺野の事を特別に思ったワケではないが、抱きしめる腕に嫌悪はなく、寧ろ心地よさとドキドキを感じる。
彼に異性としての意識が確実に芽生えてしまった。
紺野がそっと体を離す。
「さて、ナゾのサンタXが、異性の親切にもうっかりトキメイテしまう程に寂し過ぎるバツ一アラサー女性に温かいプレゼントを用意した。受け取るか、否か。」
一々ムカツク。
ムカつくけども。
頬に触れた掌が首筋から肩へ、そして腕へ滑り落ち掌を撫でるようにして指先を持ち上げる。
跳ねのけようと思えば出来るのに、跳ね除けられない。
寧ろ、いつ離れていくともしれない不安定な熱に、思わずしがみ付きたくて堪らなくなる。
人の弱みに付け込むって、こう言う事を言うのだ。
悪魔め。
だから―――
「人肌寂しいアラサーバツ一女ですので芯まで冷え切ってますんでっヌルイ温めなら即行お断り!うんと温めてくれるなら考えますけど!?」
売り言葉に買い言葉。
正美の挑発に紺野の顔が少し、ほんの少しだけ笑ったのは見間違いじゃないと思う。
それを確かめる前に軽く唇が触れた。
「プレゼント第一弾。」
「っっっ」
慌てふためく正美を余所に「行くぞ。」と手を掴んだまま歩き出す紺野。