サンタX

ウンザリしている正美を余所に、井上は何かを思い出したらしく顔を戻した。

「そういえば、加宮さんは今夜参加なさるんですか?」

「…何に?」

怪訝に問い返せば、井上は「あれ?」と首を傾げる。

「まだ聞いてませんか?今晩、フリーの人達が集まって飲み会するって。幹事のヤツ、加宮さんも誘うって張り切ってたけどな。」

「…………。」

色々な意味でちょっと無言になってしまう。

だって…。
えぇ~……
クリスマスイブに一人身が集まって飲み会って、あからさまに寂しくナイ?
しかも会社の連中と。

でも一番聞き流せないのは―――

「え?私誘うって?張り切ってたって?」

「ええ。そりゃもう。だって加宮さん一応役付きなわけだし、若いヤツ等はおいそれと気安く誘えないんですけども。キレイだしお仕事出来るし。お近づきになりたいヤロウは一杯いますものねー。」

マーヂーでー?

社交辞令ともしれないセリフだけども、ここは素直に舞い上がっておく。

この歳にもなると心温まるお言葉を掛けてもらえる機会がめっきり減るもので…。


【あけておけ】

こうなるとあれは幹事からのメッセージだったのかもしれない。

そうなりゃ、クリスマスイブの虚しい集団飲み会といえども参加しないわけにもいかまい。
というか絶対参加する。
そして若い将来の有望株をゲットしてやる!!!

正美は浅はかな野望を胸に、ウキウキと仕事をしながら幹事の到来を待った。

が。

……あり?

時間は三時の休憩に入ったというのに、幹事が現れる気配は一向にナイ。

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