サンタX
正美が優真と知り合ったのは大学時代。
趣味も合ってノリも合って、男女間のトモダチ関係が本気で成り立つと思えた相手だ。
しかし、当時は付き合う事もなくそれだけ。
再会は社会人になってから。
偶然にも正美が勤める文房具会社の下請けに優真がいた。
お互い慣れない仕事に四苦八苦の日々。
よくご飯を食べに行ったり飲みに行くようになったのは慣れた心地よさと気安さから。
安定した安心感。
きっとお互いがお互いの存在をそう思っていて、その延長で結婚をした。
しかし結婚しても正美は仕事を辞めなかったし、お互い忙しいのは相変わらず。
そして二人の関係も相変わらず―――結婚はしたものの親友とか、身内と言うに相応しかった。
情はあったけど、恋じゃない。
それに気付いたのは、結婚して一年後。
優真が本当の恋をしたからだ。
……まぁ、ストレートに言ったら浮気だ。
正美とは正反対の可愛くて家庭的な女性。
そんな女性を相手にそれこそ恋する乙女のようにトキメク優真を見ていたら否でも気付く。
…アンタにとって私はオカンだったんかい。と。
悲しさよりも怒りよりも、冷静にそう思った時点で自分も優真を愛する者としてではなく単なる身内としか認識していなかったのに気付いた。
お互いに腹を割って話せる家族。
居心地はイイケド、トキメキもジェラシーも湧かない相手。
『まー…次は見誤らないで。幸せにおなりなさいな。』
そんなカンジで円満に離婚した。