サンタX
嫌いになったワケじゃない。
けれど、生涯を共に歩んで行きたいという程の愛情も執着も湧かなかった相手、と言えばイイのか。
物思いに耽っていた正美は、不意に笑顔をマジメなモノに替えた優真にドキリとした。
「俺、正美に言いたい事があって―――」
不意に脳裏に浮かんだあのメモのメッセージ。
もしや、アレは優真だった?
優真からの伝言を受けたオフィスの誰かが、慌ててアレだけメモって置いたんだとしたら?
えー。
今更そんな真剣なお話!?
…って、ひょっとして!?
どーしよっ。
優真のコトは嫌いなワケじゃないけど、今更寄りを戻したいってワケじゃないもの。
あ~でもクリスマスイブにそんな話を繰り出してくるなんて、ちょっとだけ雰囲気にヨロメいちゃうじゃないっ?
だって優真って、昔から乙女心のわからない無邪気な少年だったし
―――でも別れてからちょっとは成長したのかしら…
「俺そろそろ彼女と結婚しよっかなって思ってんだ♪」
撃沈。
…やっぱり、鈍感ヤロウは時を経ても鈍感ヤロウだった。
目に見えてガックリした正美に優真はうろたえる。
「あ、悪ぃっ、やっぱデリカシー無さ過ぎたか、俺。だけど、正美には知っておいて欲しくてっ。別れても俺にとって正美は頼りになる姐御っていうか…」
姐御か…。
オカンじゃなかっただけ、私の想像よりマシだったな…。
「いや、だいじょーぶ。ちょっとした自己嫌悪ってか、安っい自分に落ち込んだだけだから…。」
「え?尚更意味わかんねぇけど。」
「いいの。……それよりオメデトウ。今度はちゃんと幸せになりなさいよ。結婚式に行くつもりは無いけど。」
「ぉう。さすがに俺も元妻を招待するほど非常識じゃないよ。」
クリスマスイブに思わせぶりな顔で爆弾落とすオマエは確実に非常識だ!!と言ってやりたかったがなんとか飲み込んだ。
優真がデリカシーの欠けた男だと知っていて、懲りずに舞い上がった自分がバカだったのだ。
会社に帰るという優真と別れて、正美はまた首を捻った。
結局、あの伝言は誰のだ?