サンタX


ぼんやりとした視界にクリスマスケーキが映って、正美は躊躇なく噛みついた。

だってクリスマスイブなんだから!!

例えコレがマッチの見せた幻影だとしても食べるでしょ。

「……おぇっ…!!」

しかしすぐに吐き出した。

何故って消しゴム味だったから。

「って…なんなのこれ。え?は?」

「何って、ウチの売れ筋上位の鉄板、香り消しゴム・ケーキバージョン、だろう。」

淡々とした声に正美ははっと顔を向けた。

「ちょっと!!!紺野先輩、くだらない悪戯ヤメテ下さいよねっ!!」

「下らなくはない。豪快に消しゴムを食べる光景などそう見られるモノじゃないからな。俺的にはとても有意義であった。」

コンニャロウ……

正美は、しれっとPCを打ち続けている紺野を睨んだ。

切れ長の瞳が少々冷たく見えるがとても整った顔。

黙って仕事をしている様など“出来る男”の代名詞と言っても過言ではない。

その見た目通り、仕事は出来る。
ものすごく。

その見た目から、冷たいとか、キビシイと周囲には思われおり、確かに仕事に関して言えばそれは正しい。

―――だが、紺野の根本というか、ベースは、どうしたもんかという程の“お茶目”だ。
絶対。

ニコリともしないで冗談をかますので、大抵は滑っているけれど。
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