サンタX
「ちなみに、入社当初は先輩だったが今は上司―――紺野先輩ではなく紺野課長様と呼びたまえ。」
…こんな具合に。
こんな生真面目な顔でこんな事を言われたって、冗談だか本気なのだか判別付けがたい。
冗談と分かった所で委縮してボケなどかませるハズもナイ。
入社時に正美の教育係になったのがこの紺野だった。
それから正美が違う部署に正規配属され、紺野も支店へ配属されそれっきり。
去年、今の部署に配属され再会した。
最初は正美も、顔はキレイだが無表情だし怖くて近寄りがたいと思っていた。
だがそんな紺野の時折見せる訳の分からないイヤガラセやイヤミが、実は彼なりのギャグであることが分かって以降、めっきり親近感が湧いた。
基本、正美もお笑い系なもので。
そして現在、紺野がもっぱら弄るのは正美に限られている。
課長という立場まで得ては、紺野のギャグはフツーの心臓しか持ちえない一般社員からしたらもはやパワハラであろう。
その点、正美は耐性が付いているし、受け応える事が出来る唯一の人物なのだ。
正美ははぁ~…と机に項垂れた。
「クリスマスイブだってのにこのし打ち。」
「クリスマスイブだからこそのケーキだろう。」
そんな気遣いいらん。
「大体、残業中に寝るな。」
「っ…それは、紺野課長が上司の所へ行っちゃったからで。仕事は終わりました!後は課長のハンコ待ちなんです!」
正美がそう言えば、紺野はパソコンを打ちながら片手でヒラヒラとハンコの押した書類をはためかせて見せた。
…出来てんなら先に言え。
さっさと帰るんだから。