東京物語
三章
あの人が探しておいてくれた店で
夕飯を食べた
でも 思いのほか
食事は喉を通らなくて
「どんどん食えよ」
の あの人の言葉に
答えられなかった
店を出てから 駅へと歩く
「なんだか盛り上がらないね」
とまた 何時間か前にも言った言葉を
あの人は言った
「そうかな?普通じゃない?」
「三日しか一緒に居られないんだよ…それなのに、普通でいいの?」
電車は来て あの人は黙って乗った
あの人は 少し怒った感じに言ったけれど
私は この人がこんな事を思ってくれていた。と いうことに 嬉しかった
いろいろ話そうと
引き出しに用意していたものの
逢ってしまったら
私が持ってきた ローカルな話しは
環境の変ったあの人には
くだらないような気がして話さないでいた
でも このままではいけないと
心機一転 考え直すことにした