東京物語



それからの別れときたら

来た時のようにあっけなく


『ほんと…いろいろありがとうね』

『ううん』

『…じゃあ…』

『うん…じゃ…』

私は180度回転して歩いた

あの境界線の前まで…

そしてバッグの中の金物をカゴに入れてゆく

そこに行くまで
何度も振り向こうとした…

でも 出来なかった…

ライターをかごに移しながら
あの人がまだ私から見える場所にいる気がしたけれど…

また振り向けなかった…

振り向いたなら
泣いてあの人に抱きついてしまいそうだったから…

『貴方も一緒に帰ろう』

と無理なわがままを言ってしまいそうだったから…

でも本当に行かなくてはいけないと
振り向いた時には

あの人はもう居なかった

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