七神〜私と君で咲かす花〜
異変
「琥珀」
名前を呼ばれ振り返ると、そこには颯がいた。
「そろそろあっちに帰るか?」
“あっち”……。
現実世界のことだ。
「うん」
私は短い返事をすると、道場を出た。
颯も私に続いて道場から出ると、私の隣を歩く。
庭からは鈴虫の鳴き声が聞こえる。
「帰りも青が異空間を作るの?」
「いや、桜美夜行にやってもらおうと思ってる。見回り当番だから、送ることができないんだ。悪いな」
「え。サクもあの空間開けるの?」
「当たり前だ!」
私の足元でサクが心外そうに言った。
颯がいないってことはひとりで帰るってことか。
「大丈夫か?」
心配そうに眉を下げた颯。
「うん、平気」
私は颯に、笑ってみせた。
道着から普通の服に着替えると、庭に降りてサクに空間を開いてもらう。
サクは簡単に空間を開くことができた。