仮面の男

闇医師

そうそう、これも面白い記事ね。

彼が誘拐されるのよ。

本当、毎回危ない人から狙われる彼の正体って何なのよって思った矢先だった。

私は近くのバイクを失敬して、即直結。

本当はいけないことなんだけれど、国の予算で弁償なんていくらでもできるのよ、今は緊急事態。

それも彼が名画を狙う怪盗の候補に挙がっているのよ。

クロードは過去も正体もいずれも不明だけれど、全ての難事件を解決しているわけじゃない。

その約50%が名画の位置の手がかりになる場所で起きている。

彼は難事件を解決する際に、手がかりを探しているという疑いもあるのよ。

私はそれからある洋館にたどり着いた。

といってもそこはもはや廃墟となって数年が経つ、崩れかけの場所だった。

自動車から出てきたクロードは縛り上げられているのかと思いきや、まるでその様子もなかった。

背中の曲がった怪しい片眼鏡(モノクル)を身に着けた男性と何やら話ながら歩んでいるようだった。

私は探偵秘密道具の一つ、盗聴器と盗撮用小型ロボットで追跡を開始した。

イヤホンからクロードと男の声が聞こえてきた。

映像も粗いが彼ら二人の様子が見えてきた。

『ボスがお待ちです。しかし、医者をお連れしていただく任務、此度は急を要します』

どうやら今回はいつものような暴力で解決する事件ではないようだった。

男は古い建物の奥にある大きな部屋へとクロードを案内した。

その先には一人の男性と容態の悪い少女の姿があった。

男性はどこかのお金持ちの侯爵のような格好をしていた。

『旦那様、お連れしました。クロード様でございます』

すると旦那様と呼ばれた侯爵風の男はクロードに近づいて懇願するように言った。

「娘を助けてほしい。手紙にも書いたが、医者を探している。無免許だろうが、闇医者だろうが構わん。一般の医者ではもはや難解な手術につき、責任を恐れて入院拒否をされている。君なら知っているはずだ。どんな危険なことでもやりのける、勇敢な医者の存在を。私は覚悟している。娘が植物人間になる可能性が99%でも、もう時間がないなら、残り1%にかけるのだと!」

語気を荒げる様子から、男性は発狂寸前であることがうかがえる。

母親の姿がないところ見る限り、母親がいない可能性もある。

最後の家族を守る父親の姿はもはや覚悟というより、投げやりにすら感じた。
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