繋がる空の下、繋がらない電話
街はすっかり十二月の様相を呈している。
街中がきらびやかな装飾で飾られ、クリスマスソングが流れ続けていた。平日であるクリスマス当日は一人なことが決定している私にとってはちょっとしたいじめのような気さえするほど。
ここまで盛り上げるなら、クリスマスを休日にしてくれればいいのに。遠距離恋愛のことも考慮して欲しいものだ。
思い出すのは去年のクリスマス。
こんな未来が待ってることなんて知らずに、来年は同じ家で祝えるかな、なんて彼はポツリと呟いた。
隼也はきっと覚えていないんだろう。
忘れてなければ四月のあの時点でプロポーズしてくれるはずだし、クリスマスの予定だって聞いてくれてるはずだ。会えるのはその前の三連休なんだから、そろそろどっちが行くか決めなきゃ飛行機の座席も取れないかも知れない。
【寒くなってきたよね。もう十二月だよ】
暗にクリスマスを意識させようとしたメールの返事は、半日後にようやくやってくる。
【風邪引くなよ】
しかもちょっとピントがずれてて、返信に困る。
これは本気で忘れてるのかすっとぼけてるのかどっちなの?
隼也は私と会えなくても構わないの?
苛立って電話をかけても、いつも繋がらない。
隼也の仕事はクリーンルーム内で行われることがあり、その時は携帯を持っていないのだ。
時計を見ると二十二時。
まだ仕事してるの?
それとも私の電話に出たくないの?
責め正したくたって、繋がらないものはどうにもならない。
「……ばかっ」
バタンとベッドに仰向けに倒れこみ、天井に難癖つけるのが精一杯だ。
線を描くように伝ったのは、悔し涙か悲しい涙か。
どっちものような気がする。