繋がる空の下、繋がらない電話

 とはいえ、実際私は浮気できるほどモテるわけでもないし、実家に住んでいるから、羽目を外すことも安易には出来ない。

 土曜日、暇を持て余した私は飛行機の予約情報とにらめっこ。クリスマス前の金曜の夜から土曜の午前中にかけてはもう一杯になってしまっている。


「どうしよ。早く決めないと会えなくなっちゃう」


焦るけど、でも意地も張り続けたかった。
毎日あった私のメールが来なくなったら、少しは心配してくれる?

拗ねてるの、分かるでしょ?

付き合ってた頃から何かあるたびに私は唇を尖らせて拗ねてた。
そしたら隼也は必ずキスしてくれたんだ。

“何その顔、ねだってんの?”って言って。

“違うもん、怒ってるだもん!”なんて、言ってる頃にはもう機嫌なんて治ってた。

近くだったらたったそれだけで終わることなのに。


「早く、電話でもメールでもなんでもいいから頂戴」

願うようにそう呟いて、寂しい週末を何とか過ごした。
けれども結局、その願いは叶わなかった。


 週が明けて月曜日になる。
昨晩携帯を持ったまま寝てしまったら、充電器に差し込めなくて、朝なのに電池残量が少ない。

鏡の前でメイクしながら、涙が溢れそうな自分の瞳に必死でアイラインをいれる。

タカを括っていた。
流石に、土日のどちらかには連絡をくれるだろうって。
だけど、電話は一度たりとも鳴らない。

隼也、本当に私の事忘れてるんだ。

そう思ったら、もうクリスマスの予定とかはどうでも良くなってきた。

嫌だよ。私終わりたくない。
隼也との未来しか考えたことなかったのに。

試すようなことしてしまった事を後悔する。
こうなってしまったら、今更自分から電話するのも怖い。
繋がったら、別れの言葉を言われてしまいそうで。

< 5 / 11 >

この作品をシェア

pagetop